へ走らせ、自分は部下を連れて堀見氏の別荘へ駈けつけて来た。続いてやって来た警察医は、押山の死因をナイフ様の兇器で心臓へ二度ほど突き立てた致命傷によるものと鑑定した。二つの傷の一つは、突きそこなったのか横の方へ引掻くようにそびれていた。殺されてからまだ一時間もたっていない死体だった。
夏山警部補は、キヨをとらえて、とりあえず簡単な訊問を始めた。すっかりあが[#「あが」に傍点]ってしまって、少からずへどもどしながらもキヨは、事の起ったままをあらまし答えて行った。
「……なんでもそんなわけでして、昨晩《ゆうべ》押山様は、大変遅くまで外出なさり、お酒を召してお帰りのようでしたが、それから私達はグッスリ眠りましたので、大月様とかからお電話を頂くまでは、なんにも知らなかったんでございます」
キヨがそう結ぶと、夏山警部補は、玄関から外へ出て見たが、そこで車庫《ギャレージ》の方へ歩きながら警部補は、懐中電燈の光で、地面の上の水溜りの近くに、車庫《ギャレージ》の方へ向って急ぎ足についている女の靴の跡を、二つ三つみつけ出した。
車庫《ギャレージ》には自動車《くるま》はなくて、油の匂いが漂っていた。
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