りへおなじように綱をひっとき[#「ひっとき」に傍点]結びにして、それをつたって下の高い岩の上へ降りる。塔の根元よりは五、六メートルも高い岩だ。そしてひっとき[#「ひっとき」に傍点]結びを解いて、不要になった綱を海中へ投げ込む……」
「なるほど、素晴しい」
わたしは思わず嘆声を上げた。「それならどんな力のない男でも、少し動きさえすれば楽にやれますね。じゃ一体、それは幽霊の仕業《しわざ》か、それとも人間の仕業か、ということになりますね」
「さあ、それが問題だよ」と東屋所長は立ち上りながら言った。
「暴れ石のからくりもこうわかってみれば、たしかに人間の仕業としか思われないこまかさがある。けれども一方、あの謹厳な正直者の風間看守は、たしかに怪異の姿を見たと言うし、ランプ室の床に四散していた汚水といい、妙な唸り声や、鳴き声といい……ああとにかく、もう一度塔の上へ登ってみよう」
そこでわたし達は、ふたたび塔上のうす暗いランプ室へやって来た。けれどもそこには、三田村技手がいくつかの荷物を持って、わたし達よりも一足先に登って来ていた。そしてわたし達を見ると、これからアンテナの取付工事をするのだが、
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