の浮漂微生物の群成に依る赤潮が、真珠養殖に取っての大敵である事を思い出したのです。だから深谷氏は、九州沖からこの附近までの間に於ける黒潮海流の平均速度を、二十四時、つまり一昼夜五〇|浬《カイリ》乃至八〇|浬《カイリ》と見て、赤潮の来襲を、今日の午後までと、大体の計算をしたのでしょう。そして今日の午後までに、昨日にしてみれば『明日の午後まで』に、真珠《まべ》貝の移殖を行わなければならない。そこで深谷氏は、用意を整え、下男――実は共謀者の早川を連れて、ひそかに邸《やしき》を出帆したのです。そして、第何回目かの作業を終った時に、早川の胸裡に恐ろしい野心が燃えあがったのでしょう。恐らくその作業場と云うのは、あの鳥喰崎の向うの、美しい、静かな、鏡のような内湾に違いないです。――だが、もうこれで、あのキャプテン深谷氏の秘密人工真珠養殖場のマベ貝は、完全に全滅です――」
東屋氏は云い終って、煙草の煙を、ぐっと一息深く吸い込んだ。
私達は一様に深い感慨を以て、血のような鳥喰崎の海を見た。斑《まだら》な禿山の上には、何に驚いたのか鴉の群が、折からの日差しの中に慌だしく舞い上り、そしてその岬の彼方の沖
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