なく私達は物置の中へはいって、銘々《めいめい》に秤へ懸りはじめた。
 先ず東屋氏が五六・一二〇|瓩《キロ》、次に私が五五・〇〇〇|瓩《キロ》、下男の早川が六五・二〇〇|瓩《キロ》。二つの石は合せて一四・六〇〇|瓩《キロ》。そして合計一九〇・九二〇|瓩《キロ》。――
 東屋氏は、以上の数字をノートへ記入しながら、
「合計一九〇・九二〇|瓩《キロ》と、さあよし。つまりこれが、昨夜の白鮫号に加えられた、最高の重量と云うわけだ。……じゃあここらで、昼食にありつくとしようか」
 そこで私達は物置の外に出た。けれども東屋氏は、物置の直ぐ右隣のスマートな船室《ケビン》風の室《へや》を見ると、思いついたように早川へ云った。
「これが、キャプテンの書斎ですね?」
「ええそうです。船室《ケビン》、船室《ケビン》と呼んでいる特別の室でございます。やはりキャプテンの御趣味に従って七、八年前に建てられたものでして、お許しがなくては誰でも這入れないことになっております」
「成る程、じゃあもう、永久に這入れないわけですね」
 東屋氏は皮肉を云いながら歩き出した。

「ローンジを兼《かね》た美しい主館《おもや》の食堂
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