て行った。
続いて今度はお品が呼び出された。女が椅子につくと、巡査が係長へ云った。
「この女には、発火の原因に就いても調べるんでしたね」
係長は黙って頷くと、女へ向った。
「安全燈《ランプ》から発火したんだろうな?」
「……」
「火元は安全燈《ランプ》だろう?」
お品は力なく頷いた。
「お前の安全燈《ランプ》か、亭主の安全燈《ランプ》か、どちらだ?」
「わたくしのほうです」
「じゃアいったい、どうして発火したのか。その時の様子を詳しく云ってみろ」
お品はこの問にはなかなか答えなかった。が、やがてポロッと涙をこぼすと、小声でボソボソと俯向いたまま喋りだして行った。お品がその時のことをどんな風に述べていったか、しかしそれは、ここでは云う必要がない。お品の陳述、既に物語の冒頭に記したところと寸分違わなかった。
さて女の告白が終ると、係長は姿勢を改めて口を切った。
「いずれその時のことは、またあとから発火坑の現場について、お前の云ったことに間違いないか調べ直すとして……これは別のことだが、お前はあの時、兄に抱かれて納屋へ帰ったと云うが、確かにそれに間違いないか?」
しかしこれは、訊
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