の連結にとりかかった。係長は工手を残して歩き出した。
 広場の事務所には、もう四人の嫌疑者達が、巡査と三人の小頭に見張られて坐り込んでいた。
 お品はいつの間にか寝巻を着て、髪を乱し、顔を隠すようにして羽目板へ寄りかかりながら、ぜいぜい肩で息をしていた。兄の岩太郎は、顔や胸を泥に穢したまま鳩尾《みぞおち》をフイゴのように脹《ふく》らしたり凹《へこ》めたりしながら、係長がはいって行くから睨みつづけていた。
 峯吉の父親は、死んだ魚のそれのような眼で動きもせずに一つところを見詰めつづけ、母は小頭の腕に捕えられながら、時どき歪んだ笑いを浮べてはゴソゴソと落着がなかった。
 係長は四人の真ン中につッ立つと、黙ってグルリと嫌疑者達を見廻した。
「これで峯吉の身内は全部だな」
「はい。あとはアカの他人ばかりで」
 小頭の一人が云った。
 事務所は幾部屋かに別れていた。係長は小頭へ四人の嫌疑者を一人ずつ連れ込むように命じて、巡査と二人で隣の部屋へ引帰ると、そこのガタ椅子へ腰を降ろして陣取った。
 最初に岩太郎が呼び込まれた。
 係長は一寸巡査に眼くばせすると、乗出して岩太郎へ向き直った。そしてなにか
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