たちがやって来た。
写真をとられたり、色々な話を聞かれたりしたあとで、銀行の支配人さんがいった。
「お嬢さん。あなたのお蔭で、私共の銀行は、おお助かりをいたしました。ついては、何かお礼を差上げたいのですが、なにがお望みでしょうか?」
すると、クルミさんは、一寸ためらってから、こっそりいった。
「そうですの? じゃ、折角ですから、あたしの使ってしまった、あの香水を買っていただきましょうか? だってあたし、あの品を、従姉《いとこ》の信子さんに、お贈りするつもりだったんですもの」
「おやおや、お嬢さん。私共は、もっと沢山のお礼を差上げたいのですよ。それはそれとして、さ、なんでも外にお望みの品を、もうひとつおっしゃって下さい」
すると、クルミさんは、一寸考えてから、恥かしそうに囁《ささや》いた。
「じゃ、あたし、サンドウィッチをいただきますわ」
[#下げて、地付きで](おわり)
底本:「少女の友」實業之日本社
1940(昭和15)年5月号
初出:同上
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:金光寛峯
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