見出して、その次に小さな文字が何行も並び、それから又、前よりは少し小さな活字ではあるが、一層恐しい第二の見出しが印刷されてあった。
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犯人は洋服姿の大男で、中指のない四本指の右手が最大の特徴《とくちょう》、凶器《きょうき》を擬《ぎ》せられつつ沈着なる宿直員の観察《かんさつ》
[#ここで字下げ終わり]
クルミさんは、急に眼の前がクラクラッとなって、思わずうしろのもたれ[#「もたれ」に傍点]へよりかかってしまった。
四
なんという恐しいことだろう!
からだ中の血潮《ちしお》が、ドキドキと逆流《ぎゃくりゅう》するようだ。とてもジッとしていられない。が、さりとて、妙に体が硬張《こわば》って、声を立てることも、動くことも出来ない。
「人違いであってくれればいいが!」
クルミさんは、一所懸命に自分を押えつける。しかし、その下から、ムクムクと恐しい考えが浮上って来る。
――なるほど、洋服を着た人は何処にでもいるし、大きな男も何人もいるかもしれない。そして、中指を怪我《けが》して失った方も、広い東京には何人もいるかも知れない。しかし、この三つの特徴
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