石炭|堆積台《パイル》を、肥《ふと》った体を延び上げる様にして指差した。
そこで喬介は助役に軽く会釈すると、今度は、司法主任と向合って顕微鏡の上に屈み込んでいる警察医の側へ行き、その肩へ軽く手を掛けて、
「どうです。判りましたか?」
すると警察医は、一寸そのままで黙っていたが、やがてゆっくり立上って大きく欠伸《あくび》をひとつすると、ロイド眼鏡の硝子《たま》を拭き拭き、
「有りましたよ。いや。仲々沢山に有りましたよ。――先ず、多量の玻璃《はり》質に包まれて、アルカリ長石、雲母《うんぼ》角閃石、輝石等々の微片、それから極めて少量の石英と、橄欖《かんらん》岩に準長石――」
「何ですって。橄欖岩に準長石?……ふむ。それに、石英は?」
「極く少量です」
「――いや、よく判りました。それにしても、……珍らしいなあ……」と喬介はそのまま暫く黙想に陥ったが、やがて不意に顔を上げると、今度は助役に向って、「この駅の附近の線路で、道床に粗面岩の砕石を敷詰めた箇所がありますか?」
するとその問に対して、助役の代りに配電室の技師が口を切った。
「此処から三|哩《マイル》程東方の、発電所の近くに切通《き
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