介は笑いながら、
「ところが73号は、この亙り線を経て本線へ移ってはいないのです!――この屍体の位置を御覧なさい。もしも73号が、この亙り線へ移ったのであったならば、遠心力の法則が覆えされない限り、屍体はカーブの内側、即ちこの転轍器《ポイント》の西方へ振落される事は絶対にないのです。そして、何よりも先ず、こちらの一番線の延長線上を見て下さい。ほら、亙り線と違って、雪が積っていないじゃあないですか!――とにかく駅長の仕事です。転轍器《ポイント》の聯動装置ぐらい楽に胡魔化せますよ。ところで、この先の線路は、何になっていますか?」
「車止めのある避難側線です。――もっとも途中の転轍器《ポイント》に依って、三|哩《マイル》先の廃港へ続く臨港線に結ばれていますが」
「ふむ。とにかく、出掛けて見ましょう」
 そこで転轍器《ポイント》が切換えられると、私達を乗せた運搬車《モーター・カー》は再び疾走《はし》り出した。そして、雪の積っていない軌条を追い求める様にして、もうひとつの達磨転轍器《だるまポイント》を切換えた私達は、とうとう臨港線の赤錆た六十五|封度《ポンド》軌条の上へ疾走《はし》り出た。
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