った。
 私は、驚きながらも、喬介の興奮の静まるのを待って、この殺人事件の動機に就いて、訊ねて見た。すると喬介は、重々しく、
「多分、――復讐だよ」
 と、それなり黙ってしまった。
 恰度その時、助役と機関庫主任が、一層興奮してやって来た。そして助役は、喬介へ、
「私は、気狂いになりそうだ!――ともかく、運搬車《モーター・カー》へ乗って下さい。只今、N駅からの電信に依ると、疾《とっく》の昔に着いて、と言うよりも、そこで恐るべき衝突事故を起してる筈の73号が、まだ不着だそうです!……事故は、途中の線路上で起ったのだ!」
 で、私達は、早速二番線に置かれてあった無蓋の小さな運搬車《モーター・カー》へ乗込んだ。
 やがて線路の上を、ひと塊《かたまり》の興奮が風を切って疾走し始めた。が、駅の西端の大きな曲線《カーブ》の終りに近く、第二の屍体が警官の一人に依って見張られている地点まで来ると、急に喬介は立上って車を止めさした。そして助役へ、
「73号は、此処の亙《わた》り線を経て、下り一番線から下り本線へ移行する筈だったんですか?」
「そうですとも。そして、勿論そうしたに違いないです」
 すると喬
前へ 次へ
全35ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大阪 圭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング