腕の男です!」
そして、吃驚《びっくり》している私達を尻眼に掛けながら、喬介はタンクの梯子を降りて行った。そして其処で騒いでいた助役を捕えると、
「当駅の関係者で、左手の無い片腕の男があるでしょう?」
「ええッ!――片腕の男※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
助役は、急にサッと顔色を変えると、物に怖《おじ》けた様に眼を引きつけて、ガクガク顫えながら暫く口も利けなかった。が、やがて、
「あ、あります」
「誰れですか?」と、喬介は軽く笑いながら、「――それは、多分……」
すると助役は、不意に声を落して、
「え、え、駅長です」
――私は驚いた。
そして、満足そうに煙草に火を点けている喬介を、いっそ憎々しく思った。が、流石《さすが》は司法主任だ。直ちに彼は、数名の部下を督励して本屋《ほんおく》の駅長室へ馳けつけて行った。
が――、間もなく司法主任は、興奮しながら飛び帰ると、
「手遅れです。駅長は短刀で自殺しました!」
「自殺※[#感嘆符疑問符、1−8−78]――失敗《しま》った」
今度は喬介も一寸驚いた。
可哀想な助役は、機関庫主任と一緒に、転ぶ様にして本屋の方へ馳けつけて行
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