線側の梯子を、私は喬介と同じ一番線側の梯子を、それぞれ喬介の後に従って登って行った。
 直ぐに私達は、地面から二十|呎《フィート》とないその頂に達した。そして其処の鈍い円錐形の鉄蓋《やね》の上の、軽く積った粉雪の表面へ、無数に押し着けられたままの大きな足跡や、掌《て》の跡や、はては撥形鶴嘴《ビーター》を置いたり引摺ったりしたらしい乱雑な跡などを発見した。
 喬介は直《すぐ》に鉄蓋《やね》の上へ匐《は》い上った。――実際こんな処では、匐っていなければ墜ちてしまう――そして、その上の無数の跡に就いて調べ始めた。
 向うの梯子の上では、司法主任と並んで、興奮した助役が、唇を噛み締めながら喬介の仕草を見ていたが、とうとう堪え兼ねた様に、
「じゃあ、は、犯人は、ここから梯子伝いに機関車へ乗り移り、犯行後そのまま機関車で走り去ったに違いない。ね、走り去ったんでしょう?」
 すると喬介は笑いながら、
「何故貴下は、いつまでもそんな風に解釈したがるんですか※[#感嘆符疑問符、1−8−78] ほら、これを御覧なさい。この足跡は、石炭|堆積台《パイル》の上にうず高く積み上げられた石炭の山から上って来て、こ
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