ン――鋭く響いて、スコップは私達の前へ弾き落された。私達は一様にホッとした。……
やがて、見事に検証を終えた喬介が、機関車を帰して、両手の塵を払いながら私達の側へ戻って来ると、チョビ髭の助役が、顫え声で、すかさず問い掛けた。
「じゃあ一体、貴方のお説に従うと、犯人は何処《どこ》から来たのです。道がないじゃあないですか?」
「ありますとも」
「ど、どこです?」
すると喬介は、上の方を指差しながら、
「この給水タンクの屋根からです。ほら。御覧なさい。少し身軽な男だったら、給水タンク、石炭パイル、ランプ室、それから貨物ホーム――と、屋根続きに何処《どこ》までも歩いて行けるじゃないですか※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
――私は驚いた。喬介に言われて始めてそれと気付いたのだが、四つの建物は、高さこそ各々三、四尺ずつ違うが偶然にも一列に密接していて、薄暗い構内に、まるで巨大な貨物列車が停車したかの如く、長々と横わっている。成程これでは、私だって歩いて行けそうだ。
「ところで、犯行前には、雪が降っていたのでしたね」
そう言って喬介は、給水タンクの梯子を登り始めた。で、司法主任と助役は本
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