行って、其処にタンクの横ッ腹から突出している径一|糎《センチ》長さ〇・六|米《メートル》程の鉄棒を指差しながら、下を振向いて助役へ言った。
「これは何ですか?」
「あ、それは、いま貴下の前に、タンクの開弁装置へ続く長い鎖が下っているでしょう。その鎖の支棒として以前用いられたものです」
「成程。ところで、序《ついで》にひとつ、その撥形鶴嘴《ビーター》を取ってくれませんか」
で、助役は、顫えながら、その通りにした。
喬介は撥形鶴嘴《ビーター》を受取ると、その柄先の穴を、例の鉄棒の尖《さき》に充行《あてが》ってグッと押えた。するとスッポリ填《ふさが》って、撥形鶴嘴《ビーター》は鉄棒へぶら下った。と喬介は、今度は少しずつ梯子を登りながら、撥形鶴嘴《ビーター》の柄を持って先の穴を中心に廻転させ、やがてそれが刃を上にして殆ど垂直に近く立つ処までやると、恰度其処に出ているもう一本別の錆《さび》た鉄の支棒の尖《さき》に、その柄元を一寸引掛けた。そして最後に、開弁装置へ続く鎖の恰度第二の鉄棒に当る位置に縛りつけてある太い、短い、妙に曲った針金を、同じ鉄棒の中頃へ引っ掛けた。
それらの装置が終ると、
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