付けてみる。即ち、あの撥形鶴嘴《ビーター》の柄先の奇妙な穴を思い出すのです。そして、ひとまず犯人は一人であるとし、その一人の犯人が、二人の殺害に当って必らず為《な》さなければならなかったであろう筈のカラクリ[#「カラクリ」に傍点]即ち兇器の特殊な使用方法に就いて、今までずっと考え続けていたのです。で、その結果に就いて申上げる前に、一寸駅の方に御注意して置きますが、犯人は、一人でしかも機関車がこの地点へ来て停車した時に殺害の目的で乗込んだと同様に、犯行後、再びこの場で機関車から離れたのです。つまり、――タンク機関車73号が、西方へ向ってこの地点を急速度で発車した時には、既に犯人は73号に乗っていなかったのです」
すると、今まで黙って喬介の説明を聞いていた助役が、急に吹き出しながら、
「そ、そんな馬鹿な事はない。もしもそうとすれば、機関車は独りで疾走《はし》って行った事になる――。と、とんでもない事だ!」
そして心持顎を突出し、眼玉を大きく見開いて、一寸喬介を軽蔑する様にして見せた。が、その顔色は恐ろしく蒼褪《あおざ》めていた。
四
駅長も、助役と同じ様に喬介
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