云う男です」
「いや、どうも。ところで、機関手の名前は?」
「機関手――ですか? ええ。井上順三《いのうえじゅんぞう》と言いますが」
「ふむ。そいつも殺されておりますぞ!」
助役の言葉で、機関庫主任も駅長も明かに蒼くなった。そして一名の機関庫員は、飛ぶ様にして第二の屍体の検証に向った。
すると司法主任が、待構えた様に機関庫主任を捕えて、
「73号のタンク機関車が、H機関庫を出発したのは何時ですか?」
「午前二時四十分です」
「ははあ。で、当駅を通過したのが三時半と――。じゃあ、無論途中停車はしなかったですね?」
「ええ、そうですとも。当駅で炭水補給の停車以外には、N操車場《ハンプ・ヤード》まで六十|哩《マイル》の直行運転です」
「ふむ。ところで、乗務員は何名でしたか?」
「二名です」
「二名――? 三名じゃあなかったですか?」
「そ、そんな筈はありません。第一、原則的に、機関手と助手の二名だけ――」
「いや。その原則外の、非合法の一人があったのだ!」と、それから、急《せ》き込んで、駅長へ、「N駅へその男の逮捕方を打電して下さい。もう機関車は、N操車場《ハンプ・ヤード》へ着くに違いな
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