して暫くその穴を調べていたが、やがて傍らの助役へ、
「これはどう言う穴ですか?」
「さあ――※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
「当駅の撥形鶴嘴《ビーター》で、柄の端にこんな穴の開いた奴があったのですか?」
「そんな筈は、ないんですが――」
「ふむ。判りました。その通りでしょう。第一この穴は、こんなに新しいんですからね……」
 喬介はそれなり深い思索に陥って行った。
 間もなく、W駅の本屋《ほんおく》の方から一人の駅手が飛んで来て、H機関庫から首実検の連中が到着したとの報告を齎《もたら》した。すると司法主任は急に元気附いて、警官の一人にこの場の屍体を見張っている様命ずると、先に立って歩き始めた。私達もその後に従った。
 やがて私達が、給水タンク下の最初の現場へ戻り着いた時には、運搬用の気動車《モーター・カー》でやって来たらしい三名の機関庫員は、既に屍体の検証を済して、一服している処だった。が、その内の主任らしい男が、肥った体をヨチヨチやらして私達より一足遅くやって来た助役の顔を見ると、早速立上って、
「――飛んだ事でした。被害者は確かに73号の機関助手で土屋良平《つちやりょうへい》と
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