石英粗面岩――ですって? いや。大変いい参考になりました。でも、石英粗面岩と粗面岩とは、同じ火成岩中の火山岩に属していながらも、全々別個の岩石である事を忘れないで下さい。即ち、粗面岩は石英粗面岩と違って石英は決して多くは存在せずに、却って橄欖岩や準長石の類は往々含有している事、をですな。そしてしかも、この種の岩石は、本邦内地には極めて産出が少く、大変珍らしい代物なんです」
そこで駅長は、二、三度軽く頷くと、そのまま急に黙ってしまった。喬介は司法主任へ向って、
「とにかく、撥形鶴嘴《ビーター》と言えばそんな小さな品ではないんですから、一応その辺を探して見て下さい。もし有るとすれば、きっと発見《みつ》かるでしょう」
で、二名の警官が、司法主任から兇器の捜索を命ぜられた。
一方喬介は、ソッと私を招いて、先程司法主任が知らしてくれた軌条沿いの血の雫の跡を、懐中電燈で照しながら、線路伝いに駅の西端へ向って歩き始めた。
が、二十|米《メートル》も歩いたと思う頃、立止って振返ると、給水タンクの下であれこれと指図しているらしい司法主任の方を顎で指しながら、私へ言った。
「ね君、大将の言ってる事
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