は、あの屍体に関する限り、大体間違いない様だよ。つまり、屍体は、タンク機関車73号から墜《おと》されたもので、同時にこれらの血の雫は、同じ73号の操縦室《キャッブ》の床の端から、機関車が給水で停車している時から落始めたものだ、と言う風にね。そして先生、73号の、被害者と同乗した被害者以外のもう一人の、或は二人の、乗務員に対して、有力な嫌疑を抱いているらしい。ま、大体素直な判定さ。だが、僕は、その推理に就いて云々する前に、あの屍体の奇妙に開かれた両脚や、五指を固く握り締めたままの右掌に対して、何よりも大きな興味を覚えるよ。そしてだね君。あの屍体の傷口を思出してくれ給え。あの傷は、打撲に依る挫創並に骨折で、決して出血の多いものではなかった筈だ。ね。それにもかかわらず、ほら、御覧の通り、機関車の操縦室《キャッブ》の床から落ちた血の雫は、こんな処まで続いているじゃないか※[#感嘆符疑問符、1−8−78] いや、それどころかまだまだ西方《むこう》まで続いている様だ。――ひとつ、僕達は、その血の雫の終る処までつけて行って見ようじゃないか」
 で喬介は再び歩き出した。私は一寸身顫いを覚えながら、それ
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