から澄子を殺しに出掛けるのは妙だ。――結局、とどのつまりは、澄子の奇怪な殺害事件に戻って来るのだった。そして係官達は、いよいよ幽霊の殺人事件に、真正面からぶつかって行くより方法がなくなってしまった。皆んなムキになって頭をしぼった。
――まず、澄子が殺された頃に、煙草屋のその密室も同様な家の中にいたのは、もう澄子より先に殺されていた房枝と、裏二階の部屋で寝に就いていたと云う君子との二人になる。が、なかなかに幽霊を信じることの出来ない警官達は、「青蘭」の窓から証人達が澄子を殺した房枝を見たと云っても、それはチラッと見ただけで、その顔が確かに房枝のものであったかどうかは誰もハッキリ云い得ず、ただ黒い無地の着物を着ていたことだけが一致した証言だったのだから、これは房枝などが澄子を殺しに出掛けたのではむろんなく、君子が、母の房枝の着物を着て澄子を殺し、あとから桃色の寝巻に着換えた、と見てはどうか?
しかしこの意見は、直ぐに破れてしまった。現場の窓から、殺人の直後にふらふらと房枝らしいその姿が消えてから、「青蘭」の連中が表へかけつけ、そこで寝衣《ねまき》を着た君子にぶつかるまでに、殆んど三分位
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