ね?」
私が頷くと、
「じゃアやっぱり子供のものだ」
とわけのわからぬことを云いながら、道路の生垣に沿ったところまで私を誘って行きそこに残されている二組のスキーの跡を指しながら云った。
「片杖の跡のないのも無理はないですよ。子供は、サンタ・クロースに抱えられて行ったのではなく、サンタ・クロースに連れられて、自分でスキーをはいて行ったんです」
成るほど雪の上には、大人のスキーと並んで、幅の心持狭いスキーの跡が、表通りを進んでいる。
「さア、訊問に呼び出されないうちに、急いでこの跡をつけて行きましょう」
私達は、直ぐに滑り出した。
もう大分時間もたっている事だから、どこまでその跡の主人《あるじ》達は進んでいるか判らない。最初私は、そう思って滑り出したのだが、ところが、生垣に沿って五十|米突《メートル》も進んだ処で、不意にその条痕《あと》は、なにか向うから来たものを避けるようにして二つとも右側へ方向転換《キックターン》している。私はギョッとなった。そこは隣りの空家である。二つの条痕は、ささやかな生垣の表からはいって玄関をそれ、暗い建物の横から裏のほうへ廻っているらしい。私達は固唾を
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