のでもなければ、雪がやんでしまったあとから人が通ったのでもなく、実に人の歩いている最中に、その進行の途中で、いままで降っていた雪がやんだわけです……これでもう、あの消えた足跡の正体はお判りになったでしょう。つまりあの足跡の主は、この家の窓からあの時に出て行ったのではなくて、逆にはいって来たわけです。しかも今夜雪がやんだのは恰度八時頃でしたから、そのサンタ・クロースが町の方からやって来てこの家に窓からはいった時間も、まず八時頃と見当がつくわけです」
「なるほど、よくわかりました」私は頭をかきながらつけ加えた。「そうすると、あの片杖の跡はどういうことになりますか?」
「あれですか、あれはなんでもありません。あなたが始め考えられたように、やはりそのサンタ・クロースは荷物を片手に持っていたのです。しかしそれは、子供ではなくて、あの部屋に転っていた雪に濡れたボール紙の大きな玩具箱だったのです。サンタ・クロースの贈物だったのです……」とここで田部井氏は言葉を改めて、「さア、これでもう大分わかって来たでしょう。窓の足跡は確かに外から入って来たものであり、その足跡のほかに出て行ったらしい足跡もなく、家
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