の「ミソ[#「ミソ」に傍点]」の部類に属する奴なんです。
杉本は顔を顰《しか》めてタオルに安香水を振り蒔き、そいつをマスクにして頭の後でキリッと結ぶとゴムの水管《ホース》の先端《さき》を持って、恰度機関車の真下の軌間《きかん》にパックリ口を開いている深さ三尺余りの細長い灰坑の中へ這入って行きました――。
ところが、ここで奇妙な事が発見されたんです。と言うのは、こんな場合いつでもする様に、杉本は機関車の下ッ腹へ水を引ッ掛けながら、さて何処やらに若い娘のキモノでも絡まり込んでいないかなと注意して見たんです。が、轢死者の衣類と思われる様なものは、襦袢《じゅばん》の袖ひとつすらも発見《みつ》からなかったんです。けれどもその代りに、杉本は、妙な毛の生えた小さな肉片を、まるでジグソー・パズルでもする様な意気込んだ調子で鉄火箸《かねひばし》の先に挟《はさ》んで持出して来ました。で、早速皆んなで突廻して鑑定している内に、検車係の平田と言う男が、人間の肉片にしては毛が硬くて太過ぎる、と主張し始めたんです。で、騒ぎ始めた一同は、二、三の年寄連中を連れて来て再び調べ始めたんです。そしてその結果、どうです
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