うんです。
「多分そうだろうと思っていたよ。いや、それでいいんだ。君達の留守中に、僕は機関庫へ行って、あの『葬式《とむらい》機関車』の『オサ泉《せん》』が、いつも花環を買う店は何処だと訊いて見たら、直ぐ機関庫の裏手附近の、H市の裏町にある十方舎《じっぽうしゃ》と呼ぶ葬具屋である事が判ったんだ。そしてしかもその店では、『貼菓子』は勿論、抹香の製造販売もしているらしい事が判ったんだ。これから直ぐに出掛けよう。そして直接当って調べた結果、十方舎と、B町の何か――との間に、一週に一度ずつ何等かの関係の有る事さえ判れば、もう事件は、最も合理的に一躍解決へ進む事になるんだ」
 と、そこで早速彼等は出掛けました。
 そして機関庫の裏を廻って、間もなく薄穢い二階建の葬具屋――十方舎へやって来ました。
 助役は先に立って這入ると、早速馴れた調子で小さな花環を一つ註文しました。
 成る程、その店の主人らしい、頸の太い、禿頭の先端《さき》の尖《と》ンがった、赭《あか》ら顔の五十男が、恐ろしく憂鬱な表情《かお》をしながら、盛んに木の葉を乾かした奴を薬研《やげん》でゴリゴリこなしていましたが、助役の註文を受ける
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