あったなら、なにもこんな風変りな品物を使わなくたって、例えば、人参でもいい、ごくありふれた餌で豚公を連れ出し、さて線路上へ来て、縄で縛るなんて面倒な事はせず、玄翁《げんのう》か何かで一度に叩ッ殺し、そのまま線路上へ投げ出して置く――が、しかし、この場合の犯人は、既に僕等も見て来た様に、実に不自然な、むしろ芝居|染《じ》みた道具立をしている。ね。ここんとこだよ。こんな風変りな特殊な品物を、しかも毎々利用するのは、それらの品物が、犯人が何よりも簡単に入手出来る様な手近なところに、つまり犯人が、それらの品物を商売している事を意味するんだ。で、僕のお願いと言うのはB町及びB町附近に、あの葬儀用の『貼菓子』と、抹香の製造販売をしている葬具屋が、有るか無いか君達二人に調べて貰いたいんだ」
 とまあそんな訳で、翌朝二人はB町へ出掛けたんです。
 ところが、小さな田舎町の事ですから、巡査派出所、町役場等で問い合せた結果、間もなく片山助役の註文に符合する様な葬具屋の無い事が判りました。
 で、二人の部下は力を落してH駅へ引返すと、助役にその旨を報告しました。すると助役は、意外にも嬉しそうな調子で、こう言
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