度聞かせて見てくれませんか?」
 この質問には流石《さすが》に安藤巡査も呆《あき》れたと見えまして、暫く眉根を顰《しか》めながら考えを絞っていましたが、やがて顔を挙げると、
「……会社、と言ってもH銀行の支店ですが、町役場、信用組合事務所、農蚕学校、小学校、まあ日曜日に休むのはそんなものです。製糸工場は、確か一日《ついたち》と十五日。床屋は七のつく日で月に二回、銭湯は五のつく日でやはり月に二回、それだけが公休で毎週ではありません……ええと、それから繭市《まゆいち》はまだ出ませんが、卵市《たまごいち》なら五日置きにあります……まあ、その他には……そうそう、農蚕学校で毎週土曜日の午後に農科の一寸したバザーがある位のものです」
「ははあ、その農蚕学校のバザーでは何を売るんですか?」
 そこで安藤巡査はこう答えました。
「農科の方ですから、主として学生達の栽培した野菜や果実、草花などです。……仲々繁昌します」
 すると片山助役は、その答弁にどうやら元気をつけられたらしく今度は話題を変えて、
「犯人がまだ挙げられないとしますと、捜査や、事後の警戒はどうなっていましょうか?」
 すると安藤巡査は昂
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