巡査に案内を頼んで、四遍目の犠牲者を出した農家を訪ねる事が出来たんです。
その家の主人と言うのは、五十がらみの体の大きなアバタ面《づら》の農夫ですが、一行を迎えると、臆病そうに幾度か頭を下げながら穢《きたな》いムッとする様な杉皮|葺《ぶき》の豚舎へ案内しました。そしてそこで、盗まれた白豚は自分の家の豚の中でも最も大切にしていたヨークシャー系の大白種《だいはくしゅ》で六十貫もある大牝だとか、あんなにムザムザ機関車に喰われてしまったんでは泣くに泣けんと言う様な事を、鼻声で愚痴り始めたんです。
そこで片山助役は、安藤巡査へ、
「盗まれたのは、勿論轢かれた朝の夜中の事でしょうね?」
と訊ねました。
「四件ともそうです」
安藤巡査が答えました。
「一体どうやって盗み出すのですか?」
すると安藤巡査は、
「この低い柵の開き扉《ど》を開けると、眠っていても直ぐ起きて来ますからそいつへ干菓子《ひがし》をくれてやるんです。喜んで従《つ》いて来ます」
と、そこで助役が訊ねました。
「四遍共調査なさった結果、そうして盗まれたと言う事が判ったんですね?」
「そうです。四人の被害者の陳述は、大体そう
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