ではもう出世して本省の監督局におさまっていられますが、この人が当時の部下であるこの機関庫係員を連れ、既にひと通りの下調べを済ました保線課の係員を案内役として、翌日の午後二時発の下り列車で、早速B町へやって来たんです。
 現場の曲線《カーブ》線路と言うのは、B駅から一|哩《マイル》足らずのH駅寄りにあってカーブの内側は上り線に沿って松林、外側は下り線に沿って一面の桑畑なんです。で、一同が数字の書かれたコンクリートの里程標《マイル・ポスト》の立っている処までやって来ますと、案内役の保線課員は片山助役へ、四遍目の事故があったのは昨日の事だからもう後片附けは綺麗に済んでいる旨を断って、現場に関する一通りの説明を始めたんです。それに依りますと事故の現場は四遍共全く同じその地点であって、その度毎に、そこに立っている里程標《マイル・ポスト》と、それから枕木の四頭釘《よつあたまくぎ》――これはカーブに於ける線路の匐進《ふくしん》を防ぐために、軌条《レール》に接して枕木の上へ止木《チョック》を固定させる頑固な釘なんですが、その頭は、どの止木《チョック》のそれもそうである様に、普通五分位飛び出ているんです
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