あやつり裁判
大阪圭吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)罪人《ざいにん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)離婚|談《ばなし》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)やに[#「やに」に傍点]
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 いったい裁判所なんてとこは、いってみりゃア世の中の裏ッ側みたいなとこでしてね……いろんな罪人《ざいにん》ばっかり、落ちあつまる……そんなとこで、二十年も廷丁《こづかい》なんぞ勤めていりゃア、さだめし面白い話ばかり、見聞きしてるだろうとお思いでしょうが、ところが、二十年も勤めてると云うのが、こいつが却ってよくないんでしてね、そりゃアむろん面白い事件がなかったわけじゃア決してないんですが……なンて云いますかな? メンエキとでも云いますか……そうそう、不感症にかかっちまうんですよ。……だからいまでは、もう死刑の宣告を受けたトタンに弁護士の鞄やら椅子やら、なんでもかんでも手あたり次第に裁判長めがけてぶッつけるような血の気の多い囚人でも、それから……こいつは最初のうち少なからず困ったんですが……ちっとも暴れずに、ただこう、ロ
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