から、すぐ次の茶の間の畳の上へかけて、土足のあとをみつけて吃驚《びっくり》し、周章《あわ》てて座敷の主人を起すと同時に茶の間の茶箪笥を調べたんですが、海水浴へ送るつもりで、ちょっとそこの抽斗《ひきだし》へ入れて置いた三百円の金がない――とまアそんなわけで、早速事件は警察へ移されたんです。
警察では、最初ながし[#「ながし」に傍点]の空巣狙いと見当つけて捜したんですが、やがて出入りの商人が怪しいと云うことになり、坂本家へ出入りする御用聞きが、片ッ端から虱潰《しらみつぶ》しに調べられたんです。でその結果、いま云った、その神田の洗濯屋の外交員が挙げられたんです。
もっとも、挙げられたと云っても、その洗濯屋が自白したわけじゃア決してないんですがね……なんでも、当人の云うところによると、むろん坂本家は取引先には違いないが、その日は寄らなかった。北島町へは行ったが、それは昼頃の事で、事件のあった二時頃には、蔵前へ行っていた、と云うんです。で、北島町のほうを調べてみると、確かに二、三軒の得意先へ、昼頃に寄っている事は判ったんですが、蔵前のほうは一軒も得意はなく、なんでも新らしく作ってみようかと思
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