つかないような裁判に、女房なんか使ってトテツもない大それた事をしはじめたんです……
 いやまったく、呆れ果ててものが云えませんよ……しかし、それにしてもその青山さんの電光石火ぶりには、ほとほと感心しましたよ……なんでも青山さんは、最初菱沼さんから詳しく話を聞いた時に、どうも「つぼ半」の女将が、どっちへ転ぶか判らんような事件にばっかり登場することや、どの被告人とも全然無関係で、被告や検事から呼び出したのでなく自分の方から話を持ちかけて出頭していることや、証拠物件はなく、ただ見たとか見なかったとかの証言ばかりだ、なぞと云うようないろいろの点を考え合せて、どうもこれは女将が法廷の事情に明るいところから見て、きっと法廷内に誰れか相棒がいるに違いないと狙いをつけて、まず傍聴人の仲間入りをしたわけなんです。それで傍聴席や休憩室で早くも妙な気配を感ずると、早速私に命じて例の写真をとらしたんです。その写真を、直ぐに現像すると青山さんは、「つぼ半」へ遊びに上ったんだそうですが、そこで何気なく女中にその写真を見せてカマをかけると「おや、この中に、うちの旦那さんがいる」ってことが判って、それで、いよいよ、あ
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