れが揃ったんです……もっとも菱沼さんはひどくそわそわして辺りを見廻してばかりいましたがね……
 ところが、そうして皆んなの顔触れが揃うと、まるで皆んなが入廷してしまうのを待ってでもいたように……どうです、ひょっこり青山さんが、入口に現れたんです。そして、少なからず周章《あわ》ててしまった菱沼さんには、物も云わず、壇上の裁判長に、ちょっと、こう眼で会釈したんです。するともう、予《かね》て打合せてでもしてあったと見えて、裁判長が、黙って頷いたんです……いや、驚きましたよ……ところがどうです。すると青山さんは、戸外《そと》の後ろを振返って、チラッと誰かに眼配《めくばせ》したんですが、その合図を待ってたように、多勢の警官達がドヤドヤッと法廷へ雪崩《なだ》れ込んで来たんですよ……驚きましたね……
 いったい、警官達は誰を捕えに来たと思います……え? 飛んでもない……はいって来た警官達は、すぐにバラバラと散り拡がると、どうです、キチンと着席して、これから始まろうと云う公判を固唾《かたず》を飲んで待ちかまえていた傍聴人を――そうですね、十四人でしたかね。もっとも被告の関係者は別ですがね……とにかくそ
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