這《は》ひ行くは憂《う》し、
否|残《のこり》なく味《あぢは》ひて、かれも人なる
いにしへの猛者《もさ》たちのやう、
矢表《やおもて》に立ち楽世《うましよ》の寒冷《さむさ》、苦痛《くるしみ》、暗黒《くらやみ》の
貢《みつぎ》のあまり捧げてむ。
そも勇者には、忽然《こつねん》と禍福《わざはひふく》に転ずべく
闇《やみ》は終らむ。
四大《したい》のあらび、忌々《ゆゆ》しかる羅刹《らせつ》の怒号《どごう》、
ほそりゆき、雑《まじ》りけち
変化《へんげ》して苦も楽《らく》とならむとやすらむ。
そのとき光明《こうみよう》、その時|御胸《みむね》
あはれ、心の心とや、抱《いだ》きしめてむ。
そのほかは神のまにまに。
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出現 ロバアト・ブラウニング
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苔《こけ》むしろ、飢ゑたる岸も
春来れば、
つと走る光、そらいろ、
菫《すみれ》咲く。
村雲のしがむみそらも、
こゝかしこ、
やれやれて影はさやけし、
ひとつ星。
うつし世の命を耻《はぢ》の
めぐらせど、
こぼれいづる神のゑまひか、
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