が伊太利古詩翻訳の序に述べたると同一の見を持したりと告白す。異邦の詩文の美を移植せむとする者は、既に成語に富みたる自国詩文の技巧の為め、清新の趣味を犠牲にする事あるべからず。しかも彼《かの》所謂逐語訳は必らずしも忠実訳にあらず。されば「東行西行雲|眇眇《びようびよう》。二月三月日遅遅」を「とざまにゆき、かうざまに、くもはるばる。きさらぎ、やよひ、ひうらうら」と訓《よ》み給ひけむ神託もさることながら、大江朝綱《おおえのあさつな》が二条の家に物張の尼が「月によつて長安百尺の楼に上る」と詠じたる例に従ひたる処多し。

  明治三十八年初秋
[#地から2字上げ]上田敏
[#改丁]

目次

燕の歌     ガブリエレ・ダンヌンチオ
声曲      同
真昼      ルコント・ドゥ・リイル
大饑餓     同
象       同
珊瑚礁     ホセ・マリヤ・デ・エレディヤ
床       同
出征      同
夢       シュリ・プリュドン
信天翁     シャルル・ボドレエル
薄暮の曲    同
破鐘      同
人と海     同
梟       同
譬喩      ポオル・ヴェルレエヌ
よくみるゆめ  同
落葉      同
良心      ヴィクトル・ユウゴオ
礼拝      フランソア・コペエ
わすれなぐさ  ウィルヘルム・アレント
山のあなた   カアル・ブッセ
春       パウル・バルシュ
秋       オイゲン・クロアサン
わかれ     ヘリベルタ・フォン・ポシンゲル
水無月     テオドル・ストルム
花のをとめ   ハインリッヒ・ハイネ
瞻望      ロバアト・ブラウニング
出現      同
岩陰に     同
春の朝     同
至上善     同
花くらべ    ウィリアム・シェイクスピヤ
花の教     クリスティナ・ロセッティ
小曲      ダンテ・ゲブリエル・ロセッティ
恋の玉座    同
春の貢     同
心も空に    ダンテ・アリギエリ
鷺の歌     エミイル・ヴェルハアレン
法の夕     同
水かひば    同
畏怖      同
火宅      同
時鐘      同
黄昏      ジォルジュ・ロオデンバッハ
銘文      アンリ・ドゥ・レニエ
愛の教     同
花冠      同
延びあくびせよ 
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