『新訳源氏物語』初版の序
上田敏
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)容易《たやす》からぬ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)心|細《ぼそ》けれ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「火+主」、第3水準1−87−40]
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源氏物語の現代口語訳が、与謝野夫人の筆に成って出版されると聞いた時、予はまずこの業が、いかにもこれにふさわしい人を得たことを祝した。適当の時期に、適当の人が、この興味あってしかも容易《たやす》からぬ事業を大成したのは、文壇の一快事だと思う。それにつけても、むらむらと起るのは好奇心である。あのたおやかな古文の妙、たとえば真名盤《まなばん》の香《こう》を※[#「火+主」、第3水準1−87−40]《た》いたようなのが、現代のきびきびした物言《ものいい》に移されたとき、どんな珍しい匂が生じるだろう。※[#「王+攵」、第3水準1−87−88]瑰《まいかい》の芳烈なる薫《かおり》か、ヘリオトロウプの艶に仇めいた移香《う
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