「ファン」について
伊丹万作
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私は今日までファンについてあまり考えたことがない。なぜならば第一私はファンという言葉が好きになれないのだ。
ファンという言葉が私の頭の中に刻みつけている印象は、私にとつてあまり幸福なものではない。
私は本当のファンがどういうものかを知らない。ただ私が自分の目で見てきたファンというものは不幸にも喧騒にして教養なき群衆にすぎなかつた。
私は残念ながらその人たちを尊敬する気になれなかつた。
これらの人たちを対象として仕事ができるかときかれたら私は返答に窮する。
しかし、それならば自分はいつたい何ものに見せるつもりで写真を作つているのかと反問してみる。
そこで私は努めて自分の仕事の目標を心に描こうと試みる。
しかし、どうしてもそれははつきりと浮び上つて来ないのである。
要するに、それはいわゆるファンというような具体的な存在ではないようである。
もともと私は自分のファンというものをほとんど持つていない。ファンと文
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