ず軍事の万般にわたり相当の影響を与えつつある事を見るのである。
 将帥の性格も同じ意味に於て個性を発揮するものと云うべきである。ナポレオンもアウステルリッツの如く第一線決戦を企図した事はある。また当時の縦隊戦術は後述する如く自然第二線決戦主義を有利とするのであるけれども、第二線決戦はナポレオンの最も得意とするところである。地中海民族から第二線決戦の最大名手を出した事は面白いではないか。
 また北方民族から第一線決戦の最大名手フリードリヒ大王を出したことは時代の勢いであったとは言え必ずしも偶然とのみ言えない。
[#底本233頁左上に図あり]
 用兵上に民族性が作用する事は当然軍事学上にも同じ傾向となって現われる。
 フォッシュ元帥が伊藤述史氏に言うたように(一四五頁)軍事学もまた当然民族の性格の影響を受ける。帰納的であるクラウゼウィッツと演繹的であるジョミニーは独仏両民族の傾向を示すものと云うべきだ。一八七〇―七一年独仏戦争に於ける大勝の結果、フランスに於てもモルトケ、クラウゼウィッツの研究が盛んになった。一九〇二年のボンナール『独仏高等兵学の方式について』には「ジョミニーの論述する如き
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