のため同地は仏軍の補給に重要な位置を占めていた)外交を後援するため、一部をボルトリに出していたのである。ナポレオンは墺軍を刺戟する事を避くるため同地の兵力撤退を命令したが、前任司令官の後任をもって自任していたマッセナは後輩の黄口児、しかも師団長の経験すら無いナポレオンの来任心よからず、命令を実行せず、かえってボルトリの兵力を増加し、表面には調子の良い報告を出していた。しかるに四月に入って墺軍前進の報を耳にしたナポレオンの決心は変化を来たし、四月二日ニースを発してアルベンガに達し、マッセナに命令するにボルトリを軽々に撤退する事無く、かえって兵力増加を粧うべき事を命令した。蓋《けだ》しナポレオンは墺軍の前進を知り、なるべくこれを東方に牽制してサルジニア軍との中央に突進し、各個撃破を決心したのである。マッセナは敵兵増加の徴《しるし》に不安を抱き、同日は狼狽してこのまま止まるは危険な旨を具申している。
[#底本197頁上に地図あり]
 主力をポー川左岸に冬営していた墺軍の新司令官老将ボーリューはゼノバ方面に対する仏軍活動開始せらるるを知り南進を起し、三月三十日にはゼノバ北方の要点ボヘッタ峠を占
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