的統一の限度とする。すなわち将来主権者の所有する武力が必要に際し全世界到るところにある反抗を迅速に潰滅し得るに至った時、世界は初めて政治的に統一するものと信ぜられる。
そして世界が統一した後も内乱的戦争は絶滅しないだろうと考えらるるだろう。それには前に述べた信仰の統一が強い力であることが必要であるが、同時に武力が原始的で、何人も簡単にこれを所有し得た時は内乱は簡単に行なわれたのであるが、武器が高度に進歩する事が内乱を困難にして来た事も明らかに認めねばならない。刀や槍が主兵器であったならば、今日の思想信仰の状態でも世界の文明国と云われる国でさえ内乱の可能性は相当に多いのであるが、今日の武器に対しては軍隊が参加しない内乱は既に不可能である。
しかし私は信仰の統一と武力の発達のほか、一般文明の進歩に依り全人類の公正なる生活を保証すべき物資が大体充足せらるる事が必要であると考える。すなわち人類の精神的生活が向上して無益なる浪費を自然に掣肘《せいちゅう》し、かつ科学の進歩が生活物資の生産能率を高むる事が必要であって、物欲のための争いを無限に放置されていた今日までの如き状態は解消せらるべきだと
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