佐には、資料収集について非常にお世話になった。固より大したものでないが、前に述べた人々の並々ならぬ御好意に依って、フランス革命を動機とする持久・決戦両戦争の変転を研究するための、即ち稀代の名将フリードリヒ大王並びにナポレオンに関する軍事研究の資料は、日本では私の手許に最も良く集まっている結果となった。私は先輩、友人の御好意に対し必ず研究を続ける決心であったが、その後の健康の不充分と職務の関係上、遂に無為にして今日に及んでいる。資料もまた未整理のままである。今日は既に記憶力が甚だしく衰え且つドイツ語の読書力がほとんどゼロとなって、一生私の義務を果しかねると考えられ、誠に申訳のない次第である。有志の御研究を待望する。
 支那事変勃発当時、作戦部長の重職にあった私は、到底その重責に堪えず十月、関東軍に転任することとなった。文官ならこのときに当然辞職するところであるが軍人にはその自由がない。昭和十三年、大同学院から国防に関する講演を依託されて「戦争史大観」をテキストとすることとなり若干の修正を加えた。
「将来戦争の予想」については、旧稿は日米戦争としてあったのを、「東亜」と西洋文明の代表たる「
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