はあらゆる努力を払って完全防空をする。どれだけをその範囲とするかが重大問題である。見透しが必要である。
その他はなるべく分散配置をとる。そこで「最終戦論」で提案したのは、
第一に官憲の大縮小である。統制国家に於てはもちろん官の強力を必要とする。しかし強力は必ずしも範囲の拡大でない。必要欠くべからざる事を確実迅速に決定して、各機関をして喜び進んで実行せしむる事が肝要である。今日の如くあらゆる場面を総て官憲の力で統制しようとするのは統制の本則に合しないのみならず、我が国民性に適合しない。民度の低いロシヤ人に適する方法は必ずしも我が国民には適当でない。この見地から今日の官憲は大縮小の可能なるを信ずる。官憲の拡大が人口集中の一因である。
第二は教育制度の根本革新である。日本の明治以後の急発展は教育の振興にあったが、今日社会不安、社会固定の最も有力な原因は自由主義教育のためである。教育は子弟の能力によらず父兄の財力に応じて行なわれる。その教育は実生活と遊離して空論の人を造り、その人は柔弱で鍛錬されておらない。勇気がない。勤労を欲しない。しかもこの教育せらるる者の数は国家の必要との調和は全く考えられていない。非常時に於て知識群の失業が多いのは自然である。あらゆる方面から見て合宿主義時代に全国民が綜合能力を最高度に発揮せしむる主旨に合しない。中等学校以上は全廃、今日の青少年義勇軍に準ずる訓練を全国民に加え、そのうち、適性のものに高度な教育を施し、合理的に国民の職業を分配すべく、教育と実務の間に完全なる調和を必要とする。そうすれば自然都市の教育設備は国民学校を除き全部これを外に移転し得る。都市人口の大縮小を来たすであろう。
第三には工業の地方分散である。特に重要なる軍事工業は適当に全国に分散する。徹底せる国土計画の下にその分配を定める。大河内正敏氏の農村工業はこの方式に徹底すれば日本工業のためすばらしい意義を持ち、同時に農村の改新に大光明を与える。取敢えず今日より建設する工業には国家が計画的に統制を加うべきである。
以上の方法をもってして都市人口の大縮小を行ない、しかも必要なる政治中心、経済中心は徹底せる防空都市に根本改革を断行する。各地方は一旦事ある時、独立して国民の生活を指導し得る如く必要の処置を講ぜねばならない。
右の如く大事業を強行するだけでも自然に昭和維新は進
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