町の踊り場
徳田秋声

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)体《からだ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)相当|憂欝《いううつ》な

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《むし》る

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぼちや/\
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 夏のことなので、何か涼しい着物を用意すればよかつたのだが、私は紋附が嫌ひなので、葬礼などには大抵洋服で出かけることにしてゐた。紋附は何か槍だの弓だの、それから封建時代の祖先を思はせる。それに、和服は何かべらべらしてゐて、体《からだ》にしつくり来ないし、気持までがルウズになるうへに、ひどく手数のかゝる服装でもある。
 それなら洋服が整つてゐるかといふと、さうも行かなかつた。古い型のモオニングの上衣《うはぎ》は兎に角、ズボンがひどく窮屈であつた。そこで私はカシミヤの上衣に、春頃新調の冬ズボンをはいて、モオニングの上衣だけを、着
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