の外へ延ばして、ぐったり寝込んでいた。お庄は「厭な叔父さんね。」とげらげら笑いながら出て来た。
「あんなに疲れるまで遊んであるいて、体に障《さわ》らにゃいいが……。」
 叔母は拍子ぬけがして、自分で猪口《ちょく》に二、三杯酒を注いで飲んだ。叔母と叔父とは、年がそんなに違っていなかった。
 お庄は叔父の寝相《ねぞう》を真似をしながら、「どうすればあんなに正体なくなるんでしょう。」といってまだ笑っていた。
 飯を済ましたところへ、小原という会社の男が遊びに来た。三十少し出たくらいの、色の蒼白い、敏捷《はしっ》こそうな目をした小柄の男で、給仕から仕上げたのだということを、お庄は後で聞いた。
「小崎さん今日は見えませんでしたね。」と小原は叔母が火を入れて出す手炙《てあぶ》りの側へ、お庄が奥から持って来た座蒲団を敷いて、小綺麗な指頭《ゆびさき》で両切りの短く切ったのを、象牙《ぞうげ》のパイプに嵌《は》めて喫《の》みはじめた。お庄は古《ふる》こびれたようなその顔を横から見ながら、時々|傍《わき》を向いて何やら思い出し笑いをしていた。するうちに叔母に睨《にら》まれて奥の方へ逃げ込んで行った。
 小原
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