たりに、何やら入れ墨のようなものを描いて、にやにやしていた。
「知っていますよ。」
 お庄はその悪戯書きを見て見ぬふりをしていたが、終いに一緒に噴《ふ》き出してしまった。
「叱られますよ。」とお庄はまた本気《むき》になって見せた。その顔は紅《あか》かった。
 く、く、くと鳴いている鶏《とり》の世話をしに芳太郎は裏の方へ出て行った。お庄も砂埃を拭き掃除しようと思ったが、初め来たころ日課にしていたようには働けもしなかった。今日逃げようか、明日は出ようかという気が、始終|頭脳《あたま》にあった。
 浅山のうちでも、長く続かないことが解って来た。いつかお庄が、夜その相談に行ったときも、夫婦は、もう断念《あきら》めてしまったような口吻《こうふん》を洩らしていた。
「私たちが黒幕にいるように思われちゃ、事が面倒ですよ。中村さんにも気の毒ですから、誰も知らない風にして、うまく逃げられたらお逃げなさい。そうすれば、私たちにも責任はないし、中村の顔も立つんですから。」と、従姉《あね》は内々でお庄を唆《そその》かした。
 お庄はそれから、時々風呂敷に包んで、着物や何かを、夜|従姉《あね》の家へ持ち込むこと
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