ふく》ませている傍に、切り髪の姑《しゅうとめ》や大きい方の子供などもいた。四十四、五の頭髪《かみ》の薄い主《あるじ》は、古い折り鞄からいろいろの書類を取り出してしきりに何やら調べていた。
 ひっそりした広い門のうちには、ほかに汚い家が二軒ばかり明りが洩れていた。
 淋しい屋敷町を通って、お庄が湯から帰って来たころには、芳太郎も途中で、一杯飲んで帰って来たところであった。芳太郎は薔薇色の胸を披けて、ランプの蔭に引っくらかえっていた。細《ほっ》そりした足の指頭《ゆびさき》まで真紅《まっか》であった。
 お庄は声もかけずに、そっと押入れから小掻捲《こがいま》きを取り出して被《か》けてやると、置き床のうえに据えた鏡台の前に坐って、銀杏返《いちょうがえ》しの鬢《びん》を直したり、白粉をつけたりして、やがてまた部屋を出て行った。
 その晩十時過ぎまで、お庄は茶の室《ま》で話し込んでいた。主《あるじ》が寝てからも、細君に引き留められて、身の上|談《ばなし》などして聞かされた。舅《しゅうと》がまだ世にあった自分の良人の放蕩《ほうとう》が原因で、自分たちがとうとう賑やかな下町から、こんな山のなかへ逐《お
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