か繁三に行ってもらってもいいし、正雄がついて行ってもいいと思ったが、強《し》いて勧めもしなかった。
「工合が悪かったら、すぐ宿屋へ入ってどっちへでも電報を打たっし。」と、伯母も言い添えた。
叔父の手荷物と言っては、書生で出て来た時分ほどの物すらないくらいであった。時計や指環などもとっくに亡くなって、汚れたパナマだけが、京橋で活動していた時分の面影を遺《のこ》していた。そのパナマも、遊びに来る糺の友人に買ってもらおうとしたくらいであったが、買値《かいね》を言えば嗤《わら》われるほどであったので、叔父は気持を悪くして、それだけは冠《かぶ》って行くことにした。
正雄もお庄も、型の古いその帽子を冠って、三等客車に乗り込んで行く、叔父の、窶《やつ》れて耄《ぼ》けたような姿を見て、後からくすくす笑っていた。
叔父はお庄のことなどは、口へ出して聞きもしなかった。出来る時分にあまり世話をしておかなかったことが、心に省みられたからでもあろうし、このごろ様子や心持のすっかり渝《かわ》った姪《めい》の身のうえを知るのも厭《いと》わしいように見えた。お庄も自分のことを言い出すどころではなかった。
「叔父
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