ついているのを、田舎に傍観している父親のことが、また噂された。廃《すた》れ株《かぶ》の買占めで失敗《しくじ》ってから、家のばたばたになった本家の後始末に気骨を折っている父親が、このごろは皆なの思うほど気楽でもないことは、こっちへも解って来た。本家が銀行から差押えを喰って、ぴたぴた庫《くら》を封ぜられ、若い主《あるじ》が取り詰めたようになって気の狂い出したという消息の伝わったのは、お庄が行ってから間もないことであった。
 頭脳《あたま》に異状のある本家が、わざわざ町から診察に来た医師《いしゃ》の頭を、撲《なぐ》り飛ばしたということを言い出して、正雄もお庄も、腹を抱えて笑った。
 宵から奥で寝ている叔父が、目をさましたと見えて、力ない咳《せき》の声が洩れて来た。

     七十六

 家へ帰って行ったのは、その翌々日の午後であった。それまでお庄は伯母の家へ行ったり、親しい近所の家を訪ねたりして遊んでいた。伯母の家では、相変らず皆と花など引いたが、その間も心は始終今の家に辛抱していいか悪いかということについて思い惑うていた。
「前途《さき》に見込みがないから、私もうあすこを逃げてしまおうか
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