が弱くて可愛い正雄のことで先刻《さっき》から気を揉んでいた。
「しばらく田舎へでもやらずかと思うけれど……そうすれば叔父さんも一緒に行くと言うでね。――叔父さんも梅雨《つゆ》が体に障《さわ》ったようで、あれからずッと工合が悪いで、どうでも田舎へ帰ると言って、今その支度中さね。」母親は火鉢に凭《よ》りかかっていながら、屈托そうな顔をして、火箸で火を弄《いじ》っていた。
 家の荒《さび》れている様子が、ひしひしお庄の胸に感ぜられた。お庄が行くとき傭《やと》い入れた女中の姿も見えず、障子の破けた台所の方もひっそりして、二階にも人気がなかった。掃除ずきな自分がいなくなってから、そこらのだらしなく汚くなった状《さま》も、心持悪いようであった。
 この家を早晩畳まなければならぬことは、行く時分からお庄にも解っていたが、また帰って来てここを盛り返したいような気も、時々しなくもなかった。
 母親は、ここの雑作が売れ次第、借金を少し片着けて、それから田舎へ行きたいと言っている叔父のことや、お庄が行ってから、ここへ寄り着く人もめっきり少くなったことなどを言い出した。叔父が会社にいた時分の連中も、近ごろはと
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