ることを、話すことも出来なかった。
 芳太郎を嫌っているお庄の心持は、従姉《あね》によく解った。
「老人《としより》の思うようじゃないんですよ。」と、従姉《あね》は、お庄の顔をじろじろ眺めながら、薄ら笑いをしていた。
「でもまア辛抱していさえすれば、あの家も始終はお前たち夫婦のものだでね。」
「そうは言っても、欲ばかしにかかってもいられませんよ伯母さん。」
 鮨《すし》を少しばかりおごって、茶呑み話にごまかしていながら、お庄はしみじみした話もしずに、やがてそこを出た。
「浅山から、中村さんによく話してもらって上げるからね、自棄《やけ》を起さないで、まア当分辛抱した方がいいでしょう。」
 帰りがけに、従姉《あね》はお庄の様子を気遣いながらそう言った。お庄がお照の稼《かせ》ぎに行っている茨城の方へでも行けば、自分の体一つぐらいは、自分の腕一つで、どうにでもして行けると言ったことが、従姉《あね》にも気にかかった。
「今夜は家へお帰りよ。心配さしても悪いでね。」と、伯母も門口まで送って出ながら行った。
 外はもう更けていた。そこらの芸妓屋や、劇場の居周《いまわ》りも静かであった。お庄は暗い町を
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